写 心 [平 和]
紫陽花が咲きはじめる
鎌倉山を登るあなたの後ろ姿
夢中に追いかけて登るわたし
心を浮き浮きわくわくさせて
鎌倉山に声と姿を求めて登る
明暗の風と虫や鳥たちの気配
あなたとわたしの息づかいは
無限の山道を登り詰めていく
源平の池に映る ふたつの姿
水面に浮く蓮に向けて迷わず
瞼のシャッターを切った一枚
暗闇に浮く水面のふたつの姿
あの時 脳裏をよぎった事を
置き去りにすれば良いものを
今でも 心に写ることがある
わたしはあなたに流されて
戻れないところまで行って
あなたは欲望に疲れて消え
わたしは己の醜さに疲れる
楽しかったが寂しい山道を
忘れかけてはまた思いだし
思い出しては 忘れていく
回顧される置き忘れた写心
ロシア・ウクライナ戦
源氏と平氏との戦いは
人間と人間との戦いだ
人間の欲望故の戦いだ
人間は創造力を持って
人工物を作り上げてる
同時に人間は欲も生む
満たされぬ欲を求めて
人工物で人間と自然は
壊滅的な経過をたどる
紫陽花にはどう写るか
あなたは紫陽花
わたしは人間
わたしは
紫陽花にはなれるかな
残 像 [道 元]
77㎞程 離れている
歩いて行けば夕方には
会えるような気がする
無限の闇へと向かう頃
漸次に光が闇に消える
昼の残像は賢治の後姿
ようやく後姿が見えた
誰もが歳を重ねゆくと
見えてくるものなのか
我を忘れて自然に溶ける
床なる自然に抄き込んで
峰の色と谷の響を楽しむ
☆
これまでは
時の流れがゆるやかだった
残像現象が無い理由はそこにあった
時の流れが速く感じる歳の身になり
昼の残像が見えるようになってきた
私は贅沢にも この現象を楽しめる
私の人生はまだ捨てたものでは無い
みんな 土と光と風が教えてくれた
私は蜘蛛や天道虫や蜻蛉にもなれる
このように
明が 暗となり
遠くが近くなり
だんだんと
興が増えている
時間よ!止まるな! [道 元]
時間よ!時間よ!止まれ!
時間が止まると言うことは
どういうことなんだろうか
録画の一時停止ではないか
でも よ-く考えてみると
時間が止まると言うことは
一時停止でなく 電源OFF
後も先も無く静止でも無い
恐らくそこは真っ暗なのだ
吾一人 畑での出来事
鍬が地へと向かうとき
突然 真っ暗になった
☆
是諸法空相
不生不滅
不垢不浄
不増不減
是故空中
★
真っ暗から我に返ると
落花生畑に向かう鍬が
天を切る頂点にあった
時というものが消えるとは
場所も消えるということか
そんなことを考えていたら
今ここにいることが嬉しく
懸命に耕すことが超楽しい
汗が流れることも
小鳥のさえずりも
そこを歩むアリも
飛んでる紋白蝶も
若葉を抱く青空も
眺めている自分も
懸命に生きている
時間よ!止まるな!
時間よ!止まるな!
☆~★ : 般若心経の一部引用
花 筏 (hanaikada) [道 元]
散ったら散ったで
心穏やかにならず
水面に映る桜並木
夢の花筏の初出航
此岸彼岸の花達も
春息吹に喚起され
どちらに咲いても
散る先は夢の花筏
乗っている地球は
銀河に流れる花筏
此の人も彼の人も
万物も奇跡の事象
病という苦しみも
死という苦しみも
あい受け入れれば
夢の花筏は現なり
平穏希求 [平 和]
ちいちゃなクモちゃんに会う
草刈りの手の甲にちょこんと
乗って腕から肩へと歩み寄る
いつもの空を眺める者同士の
お気に入りのハットにのぼる
2022年という波乱の年に
誰もが思い煩う感染症と戦争
避けられない苦しみと悲しみ
満たされない欲望による戦火
等々が宇宙の片隅でくすぶる
生けども生けどもまた過ちを
繰り返しながら心が痛み入る
苦しみや悲しみも幾度も超え
美しい宇宙を知り始めたのに
自然の巧みを知り始めたのに
意を決して空を見上げると
ともだちの赤ちゃんクモも
感染流行と銃火の空を睨む
そして小さい脚を是以上に
大きく広げ平穏を希求する
Madoromu [自 然]
散らないようで散る
そわそわの田植え時
我が心浮きし危うし
咲いている野原に
両手両足を広げて
桜空に浮いてみる
日増しに濃くなり
ジャガイモの芽が
敷き藁から現れる
起き上がって畑の世話もしたい
待ちに待った穏やかな春なのに
まどろい満ちて日は暮れてゆく
春が来た
春が来た
野菜や花達が
目を覚ますと
僕は
微睡み始める
でも
待ちに待った
春の楽しみが
あっちこっちに
あらわれてきて
あれもこれもと
やりたいのだが
休んでは微睡む
どうやら
僕は病気になってから
とても欲張りになるが
とても居眠り屋さんだ
かように今日という日
ひねもす完全燃焼する