青空の仕業 [自 然]
手を放した景色には
ふたたび出会えない
美しく優しい温もり
心の扉の向こうへと
色褪せて霞んでいく
時々ふっと顧みれば
折よく色づいている
楠の枝を空へと辿る
一番先にできた橙の
葉が空に揺れている
昔の景色に折重なる
貴方も見えるのかと
風にたずねてみると
青空の仕業だと言う
想定外 [自 然]
飛行機が墜落する
新幹線が不全する
想定外が禍となる
学校で習う確率論
どの割合で当たる
どの割合で外れる
確率は統計上の事
確率は予測である
確率は絶対でない
確率から生まれ式
それを組んだIC
ICが機械を操る
長い距離と分岐を
電気の速さで辿る
神業でなく極普通
普通ではないのが
部分の成功を基に
自然へと挑む奢り
さっちゃん [自 然]
見た目は怖くて恐ろしい
慣れるまで時間がかかる
とても私の心はみにくい
見た目で判断する私の心
この心は何処から来たか
こんな心は嫌でたまらん
アシダカグモは私の友だ
ここにいるだけで安らぐ
隙間だらけの居間だけに
よもすがらお護りをする
私の眠りを安らかにする
さっちゃんと呼んでいる
独居詩 [自 然]
人生の終焉期に思う事
あることをしたいとか
あそこへ行きたいとか
あの人に会いたいとか
恐らくそう考えるのは
動植物の中でヒトのみ
他物は只管と風を受け
風も只管と流れている
人が何かを思うほどに
何かは人など思わない
全て人の思い上がりで
人の幻覚と幻聴である
たとえヒトといえども
全て万象森羅に溶ける
我死すとも相変わらず
陽が昇りまた陽が沈む
金流川 [自 然]
こんな暑い日は子どもの頃にもあった
あの頃の私たちは麦わら帽子を被って
ランニングシャツと半ズボン、短靴姿
釣竿を肩に右手にバケツを持っている
日焼けの顔たちの話題は魚釣りである
金流川にはオイカワ、クチボソが泳ぐ
金流川が今でも心の奥を鮮明に流れる
白黒なれども何一つ無駄のない夏休み
これまでの人生いろんなことがあった
10代の頃の劇は途中で観客が退席した
今なら最後まで見てくれる劇ができる
白黒だが金流川の劇は益々鮮明である
いわし雲 [自 然]
野山に暮らす生物達は
ようやく あの灼熱の
後ずさりを感じ始めて
我とともにホッとする
朝夕のわずかな変化が
空にいわし雲を広げる
野山の仲間たちと我に
ゆとりと豊かさを運ぶ
寒熱は生なるものへの
活性に通じると言うが
心がなければ感じえず
季節の移ろいに謝する
雪やなぎ [自 然]
うららかなる春なのに
なぜこんな夢を見たか
吹雪の中を歩いている
息ができず足が止まる
積雪は冷たいが温かい
私を迎い入れんとする
北国の雪景色が広がる
そう言えば昨日の夕方
見事な雪やなぎに会う
空に伸びやかに揺れる
春風は冷たいが温かい
6月11日まで・・・
術なしのまま苦悩する
春は益々麗らかなのに
野辺の友 [自 然]
清々しいなる気配とは
畑に向かう野道で起る
山が海が空が呼吸する
我が血も呼吸し始める
冬春の空をかけめぐる
多くの植物と語り合い
多くの友が呼吸をする
我も絶好調子と呼応する
山と海と空と風に滞らず
生まれゆく声が響き渡る
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