想う人 [往 年]
あのままにした約束を
今でも覚えているかな
僕は ずいぶんと歳を
重ねてしまったのだが
こんな雨の日曜日には
しとしとと 想い出す
それはとても遠いところで
僕の声はもう届きはしない
僕も明日を知らない年月を
すれすれに生きてきたけど
真っ赤に染まる夕暮れ時は
ふらふらと想い出すのです
卯月の陽と風に干した布団は
どこまでも優しくて柔らかい
けふという日は 最後と思い
陽が落ちれば床につくけれど
毎夜 明から暗に入るときは
うすうすらと想い出すのです
無為(むい・ぶい) [道 元]
山桜の畑には
彩と声があり
静と動があり
安と楽がある
そしてそれらが
無為なる自然に
相包まれている
文彩に表せば
染汚に属する
群れず
媚びず
靡かず
淡々として
山にいるが
世の争いが
よく見える
愛 自 然 [自 然]
気がつくと
太陽が東の山に昇る
ジャガイモを植えつけて
心地好い疲労困憊に浸る
桜の花とハッサクの汁が
わたしの血流を蘇らせる
陽春の空へと脈動して
四方の世界を駆け巡る
珈琲の香が漂う頃には
大蒜の影が最短になる
Man is the natural part, too.
Man is the natural part, too.
銀河の流れ [道 元]
わかったこと
なんと
流れは
川でも海でもないこと
しかも
誰にも触れられないこと
わかったこと
流れの先はここから見えないこと
わかったこと
流れは誰にも止められないこと
わかったこと
流れに地球が浮いていること
わかったこと
星の見える野山から離れた頃から
私たちは
競ったり
比べたり
嘆いたり
怒ったり
恨んだり
・・・と
そうすることに一生懸命になり
誰も彼もが
銀河の流れを忘れてしまったこと
わかったこと
それは
何ものからも
力を 抜いて
銀河の流れに
身を浮かすこと
※
夜空を
見上げると
ほっとするのは
野山にいた頃の
名残なんだろう
旅とも [白血病]
スプリセルが去ってから
初冬の空を眺めていると
彼はやはり世のどこかで
誰かを救っているような
そんな気がしてくるのだ
新しい友がやって来た
名前はボシュリフという
初春の空を眺めていると
雲が晴れて山波が現れて
四方の山々が低く見える
ボシュリフ君に言っておく
残念なことに旅をするには
あまりにも成熟しすぎたと
前に進む足も力もやがては
衰えて眠りに近づいていく
今ならばこの地球号に乗って
さくら前線と共に
見たことも無い
聞いたことも無い
食したことも無い
無い無いものを感じられる
ボシュリフ君!!
さぁぁ!! 出発だぁぁ!!
わたしとい木偶の坊を連れて
淡いがとても濃い旅に出よう
ボシュリフ君!!
いっぱい 楽しませてくれよ
※
スプリセル
ボシュリフ
とは
ともに
分子標的治療薬という
白血病治療薬