無為寂静 [道 元]
残すべきかと
消すべきかと
捨離進まない
年の瀬となる
記憶は朧気に
ややもすると
今やることも
ぼやけてくる
帆の船に乗り
風にまかせて
寂静の雲海を
ゆっくり進む
※
記憶が自然と捨離
されていくままに
朧気なる雲の原を
泳いでいればよい
夢気球 [道 元]
初冬 枯れ野に眠る
思わずに笑いが出る
気球の旅のはじまり
枯れ枝枯れ葉も笑う
ゆく風も羊雲も笑う
海も山も畑も皆笑う
生きて来て思うこと
流れる風と雲に乗り
全て放ち全てに任す
※ 回 顧
小学校の頃の巡回映画
気球に乗り旅する映画
たしか世界中が天然色
夢が膨らむ映画を観た
零の吾 [道 元]
人生はヤカンである
卒業の一言に記した
野干とは卑しい動物
人は野干になり易い
野干の生き方を嫌う
どんなに貧しくても
ボロ衣を着ていても
無碍の宝を持ちたい
零の吾から出発して
朝露に光り夕に染む
心地よい畑へ向かう
零の吾になって戻る
無色無形へ [道 元]
自然薯を掘り続けて
まもなく72分経つ
休んでは空を見上げ
風に舞う黄葉を追う
葉散るイチョウの葉
春季の光で出現して
秋季の陰に銷融する
峯の色渓の響は我心
放てば 手にみてり
生死も気にならない
摩尼珠花 [道 元]
春の長雨久し続く
傘をさして桜見る
土曜日曜が過ぎて
人目が離れる度に
薄紅に染まる花弁
欲無くまっすぐで
貪瞋痴の毒も無く
摩尼珠の心を持つ
花が有為空に咲く
※
摩尼珠花→
人は皆、尊い仏性を
人は皆、尊い仏性を
持っているが、その
ことに気づいていな
い、でも花は自ずか
ら仏性を持つが如く
咲いてる。それを見
る人々は感動する。
その一瞬、内奥にあ
る摩尼珠のような宝
(仏性)に繋がる。過
ぎるとまた貪瞋痴の
三毒に悩む人に戻る。
摩尼珠のような宝
を常に持っている花
を私は「摩尼珠花」
と勝手に名付けた。
有為(うい) →この世
野ざらし農夫 [道 元]
畑で齧る春ダイコン
野山に響き渡る食音
病弱な血道管が蘇る
手を伸ばし捥ぎ齧る
夏みかんの瑞々しさ
病弱な血道管が蘇る
畑で飲むplumwine
野山に溶けて染渡る
病弱な血道管が蘇る
ここまで生きている
病気のお陰で生死を
超える生き方を識る
聞こえないもの識る
知らない香りを識る
四方の味わいを識る
☆
諸行無常
一切空也
応無所住
而生其心
秋だにも [道 元]
何者このように来たる
待っている生き物へも
そうでない生き物へも
森羅万象へと出現する
天気予報なぞ見ずとも
誰彼からも聞かずとも
朝夕の気配が潜み来て
森羅万象へと出現する
秋の夕空に揺れている
夕日は昇る月を照らし
月光も生き物を照らす
森羅万象へと出現する
道元 辞世の句
↓
また見むと
思ひし時の
秋だにも
今宵の月に
眠れやはする
今年の中秋の名月
今年の中秋の名月
9月10日である
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