独居詩 [自 然]

人生の終焉期に思う事
あることをしたいとか
あそこへ行きたいとか
あの人に会いたいとか

恐らくそう考えるのは
動植物の中でヒトのみ
他物は只管と風を受け
風も只管と流れている
人が何かを思うほどに
何かは人など思わない
全て人の思い上がりで
人の幻覚と幻聴である

たとえヒトといえども
全て万象森羅に溶ける
我死すとも相変わらず
陽が昇りまた陽が沈む
金流川 [自 然]

こんな暑い日は子どもの頃にもあった
あの頃の私たちは麦わら帽子を被って
ランニングシャツと半ズボン、短靴姿
釣竿を肩に右手にバケツを持っている

日焼けの顔たちの話題は魚釣りである
金流川にはオイカワ、クチボソが泳ぐ
金流川が今でも心の奥を鮮明に流れる
白黒なれども何一つ無駄のない夏休み

これまでの人生いろんなことがあった
10代の頃の劇は途中で観客が退席した
今なら最後まで見てくれる劇ができる
白黒だが金流川の劇は益々鮮明である

いわし雲 [自 然]

野山に暮らす生物達は
ようやく あの灼熱の
後ずさりを感じ始めて
我とともにホッとする

朝夕のわずかな変化が
空にいわし雲を広げる
野山の仲間たちと我に
ゆとりと豊かさを運ぶ

寒熱は生なるものへの
活性に通じると言うが
心がなければ感じえず
季節の移ろいに謝する

萎れない [平 和]

暑いの暑いのとても暑い
プランターの草花に謝る
地植えの花は元気を求め
生きたい根は活路を求む

今までぼんやりと現れた
飛蚊が鮮明に見えてきた
幾度か行間を邪魔する度
世の絡繰りが鮮明になる

世間では不正事が広がり
何もかも不信に満ちてる
偉い大人の偽りを見ても
萎れるな未来に生く子よ

我 忘 [宇 宙]

経文の意を考えると
雑念で読経が止まる

山の畑を夢中に耕す
清々しい心地になる
都会の雑踏にはない
涼の風で我を忘れる

男だ女だと喧噪する
同数の鋳方にしても
その差違は益々開き
時経ても喧噪消えず

人間が植物や動物と
共生しようとしても
出現時から益々離れ
もう自然へ戻れない

我忘はボーダレス也
全て生かされている
梅雨の間に [土光風]

畑は山の麓の谷にある
天から雨水が辿りつく
山の有機肥料を運んで
自然のままにできた畑


ある時は作物が水底に
ある時は野鳥が食して
ある時は照りで枯れる
天の堆肥が実りを呼ぶ

欲もなくありのままに
天を見上げては微笑む
山は時なり空も時なり
限りなく自然に銷融す

あゝ虚構 [平 和]

仰げとも描けども
農夫の詩に至らず
質さぬ虚構の政策
呆れて力が抜ける

吾の筆は鍬となり
畑を耕し畝を作る
畝は空の雲を仰ぎ
苗の活着を進める

手に筆が帰るまで
移ろい易い策から
目も耳も遠ざけて
山の畑を黙に耕す
難破船 [平 和]

不正はコロナ以上に感染する
国の舵をとる議員の不祥事は
朝のニュースにも流れている
そして
見聞きする民の良識を狂わす

かの有名なカーメーカーさえ
不正を行い信頼を低下させる
日の本なる船は難破しそうだ
そして
不正なる風潮はいよいよ高波

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