寛 解 [白血病]
喧騒から遠ざかる
山桜の畑にいます
花椰菜の苗植えは
とても楽しいです
実はとても大切な
秘みつがあります
丁寧に植える程に
聞こえます 声が
沢山お話をします
あっ という間に
日が暮れて夕日に
包まれ寛解します
※ 治療経過
長年服用のスプリセル
副作用で胸水が溜まる
一時、投薬を停止する
三ヶ月後症状悪化する
薬替えボシュリフにて
分子標的治療を進める
ボシュリフは副作用が
少なく薬の種類が減る
いちばん大事なことは
病になっていることを
気にせず楽しく過ごす
人里離れた畑は楽しい
狂い咲き [平 和]
神無月 山桜に花が咲く
これを狂い咲きというが
それは人間の見方である
開花は春への兆しである
霜月 山桜の花弁が舞う
罪あるものが立候補する
人間の欲の深さに何とも
呆れ果てて穴に入りたい
日本でも揺れ動く人間性
選挙権は行使されるのか
有権者の視力が試される
万一再選あれば狂い咲き
さっちゃん [自 然]
見た目は怖くて恐ろしい
慣れるまで時間がかかる
とても私の心はみにくい
見た目で判断する私の心
この心は何処から来たか
こんな心は嫌でたまらん
アシダカグモは私の友だ
ここにいるだけで安らぐ
隙間だらけの居間だけに
よもすがらお護りをする
私の眠りを安らかにする
さっちゃんと呼んでいる
秋 陽 [土光風]
ようやく陽が昇る
身体の調子がいい
山ザクラの畑まで
トレッキングする
待ちに待った秋陽
乱世情から離れる
ペンと紙を置いて
鍬抱え畑に向かう
秋ミョウガを採る
山栗を食べてみる
山柿を食べてみる
秋陽が朝露で光る
一得一失 [宇 宙]
何かを得れば何か失う
森羅万象が自然本来に
持っている貴重な鉄則
四季折々の気象変化は
ゆるやかな時間を刻む
「奇跡の地球」の謂れは
自然との調和が大前提
蒸気機関を始めとする
利器等は時流を速める
その流れは環境を変え
環境は不適応をつくる
46億年前に誕生して
直近の二百余年の間に
地球は痛く病み始めた
そろそろ気づいていい
何かを得れば何か失う
便利な物ほど要を失う
未来を生きる子供達が
身につけたい能力とは
一得一失を心にとめて
自然と共に生きる能力
黄色点滅 [宇 宙]
あつくてあつくて
たまらんたまらん
喉乾くぞたまらん
雨降って雨降って
たまらんたまらん
溺れるぞたまらん
いつもと違う気象
先が読めない気象
たまらんたまらん
地球は黄色の点滅
なにが原因なのか
意を酌んで考えよ
能く人なればこそ
無忖度 [白血病]
いつの間に身に着いた
ついつい出る嫌な口癖
めんどうくせえぇぇと
何かある度に口にした
働きざかりによく出た
人生後半まで続く口癖
年老いて不治の血癌が
吾身に馴染んできた頃
めんどうくせえぇぇの
口癖はどこかへ忘れた
何のしがらみをもなく
何の忖度もしなくなり
静かに黙々と畑を耕す
青空の雲に身を任せる
ようやく気温が下がり
秋冬の野菜の種を蒔く
無銭遊学 [往 年]
高卒以来のわが青春とは
よくバイトしよく学んだ
専門書等はとても高くて
我の一食分の百倍もした
古本屋で安く買い求めて
何度も読み分かったこと
先人の宝を身に着けても
我の力にはならないこと
でも単位は確実に取得し
金の掛る追試は免がれた
授業料免除は我にとって
女神の御心でありお陰で
卵入即席麺を食べられた
貧しい学生時代だったが
多くの友が助けてくれた
欅の西千葉キャンバスと
習志野馬小屋の無名寮は
生きる喜びに満ちていた
独居詩 [自 然]
人生の終焉期に思う事
あることをしたいとか
あそこへ行きたいとか
あの人に会いたいとか
恐らくそう考えるのは
動植物の中でヒトのみ
他物は只管と風を受け
風も只管と流れている
人が何かを思うほどに
何かは人など思わない
全て人の思い上がりで
人の幻覚と幻聴である
たとえヒトといえども
全て万象森羅に溶ける
我死すとも相変わらず
陽が昇りまた陽が沈む
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