岩手の花泉と花巻とは


77㎞程 離れている


歩いて行けば夕方には


会えるような気がする








床につき疲れた身体が


無限の闇へと向かう頃


漸次に光が闇に消える


昼の残像は賢治の後姿








ずいぶんな歳になって


ようやく後姿が見えた


誰もが歳を重ねゆくと


見えてくるものなのか








自未得度先度他というが


我を忘れて自然に溶ける


床なる自然に抄き込んで


峰の色と谷の響を楽しむ












これまでは


時の流れがゆるやかだった


残像現象が無い理由はそこにあった


時の流れが速く感じる歳の身になり


昼の残像が見えるようになってきた


私は贅沢にも この現象を楽しめる


私の人生はまだ捨てたものでは無い


みんな 土と光と風が教えてくれた


私は蜘蛛や天道虫や蜻蛉にもなれる


このように


明が 暗となり


遠くが近くなり

だんだんと


興が増えている