描く農夫 [土光風]
時を遅らせることができる
畑に向かい描き続ける農夫
悠々湧き生まれる 夏の雲
磯かおる潮さわぐ 夏の風
蒼翠を照らしむる 夏の光
またもや血が動きはじめる
あの空を越えて海を越えて
それから あの山も越えて
注ぐ光から色をとり寄せる
園芸は絵描きに似て楽しい
う~む・・じつにほろあまい
う~む・・じつにすすっぱい
う~む・・じつにしょつぱい
う~む・・じつにほろにがい
久しぶり 雲も 風も 光も
皆調度いい味の元になってる
詩 鏡 [宇 宙]
この歌はなかなか奥が深い
この歌詩が鏡とするならば
若い私は鏡に映らなかった
曇りなく 鏡に
映るその朝には
降っている雨も
吹いている風も
寄せて引く波も
宇宙の森羅万象
みんな君であり
はなしかけると
こたえてくれる
☆
年を重ねると見えぬ物が
見えてくるとは本当だぁ
雨の菜園 [宇 宙]
雨の中にいる私がこの上もなく好きだ
合羽ズボンは長靴の外に出すのがいい
合羽ズボンに長靴が抱かれるのがいい
合羽ズボンの長靴姿がたまらなくいい
合羽ズボンの長靴姿で菜園巡りがいい
履くときにはゆっくりと足を入れいく
腰の部分まで合羽ズボンを引き上げる
スタートが実に簡単ですぐ畑に行ける
雨の中で生活している仲間達に会える
長靴抱っこ合羽を履くととても嬉しい
合羽に当たる雨音も一雨一雨また違う
しゃがんだり膝付いたり肘付いたりと
赤子のように雲遊萍寄の流れに浸かる
晴耕雨読というより晴耕雨歩であるが
いずれにしても知らない世界にひたる
貧しかった幼年
お金は無いけど
自由があったぁ
自由と言っても
創意創造の自由
誘う友無しでも
屁の河童だった
動物や草木達は
私を受け入れて
ともに楽しんだ
でもそのお陰で
宇宙を意識する
生活に出逢えた
病を患ってから
再び自然に戻る
面 影 [往 年]
今、養老渓谷を歩く
山々の端をかすめて
風と共に舞いながら
養老川に降りてきた
川底をすべる紅葉は
去る秋に舞い降りて
時を経て流れている
振り向けば頬染めて
戸惑い恥じらう紅葉
遠日の面影に重なる
愛おしく寄添う二人
行く人も 来る人も
未来永劫微笑み祈る
微 酔 [道 元]
コロナ禍が 漸う静まるか
行く人も来る人も皆微笑む
腹も空いたし喉も渇いたし
うなぎ屋の前で足が止まる
煙美に誘われ暖簾をくぐる
まずは熱燗を一気に飲乾す
禍の淀む気持ちが流れゆく
今 吾はどこにいるのかと
軽い目眩の中で問いかけて
見下ろすと足が消えかかる
我が身を見れば 尋常なり
鰻を食する前にあの世では
たまらんと店主に請い願う
吾の鰻 はよ来られたしと
ああぁぁ 南無釈迦牟尼仏
鎌倉にて我煩悩 時を知り
滑川の流れの淀みに現れる